数年前のこと。取材で訪れたA市、宿泊先のビジネスホテルのすぐそばにその店はあった。チェックインを済ませ、いつものように界隈を散歩していて偶然に見つけた。真っ白で、真四角な店には看板はない。アルミサッシのドアに色槌せた赤い暖簾が掛かっていて、白抜き文字で「中華そば」とだけあった。屋号も品書きも、無論サンプルも無い外観。よく見るとドアのガラスに小さな白い張り紙があった。「当店は中華そば専門店です。メニューは中華そば七五〇円だけです。
[参考サイトのご紹介]
金沢の宿泊
金沢・羽咋周辺の宿泊施設・宿 - じゃらんnet
http://www.jalan.net/190000/LRG_192000/
北見のビジネスホテル
網走・北見・知床周辺のビジネスホテル - じゃらんnet
http://www.jalan.net/biz/010000/LRG_012300/
ルネッサンスリゾートオキナワ
ルネッサンスリゾートオキナワ - じゃらんnet
http://www.jalan.net/yad327873/
博多グリーンホテルアネックス
博多グリーンホテルアネックス - じゃらんnet
http://www.jalan.net/yad355796/
霧島ホテル
森深き、名泉の宿 霧島ホテル - じゃらんnet
http://www.jalan.net/yad311199/
チャーシューメンや大盛りは出来ません。スープが無くなり次第閉店いたします」ご当地ラーメンがあるような所ではなかったが、それでも近辺にちらほらラーメン屋の看板を見掛けた。この頃、この町の平均的なラーメンの価格は恐らく五〇〇円くらいだっただろう。それに比べて、随分と強気な値段設定、何より単品主義、大盛りすらやらないという潔さに強い拘りを感じた僕は迷わず暖簾を潜った。たまたまこの日の取材が夜遅い時間からだったせいもあって、小腹を満たしておきたいという気持ちが、生涯忘れ得ぬ悲劇を生もうとはこの時知る由も無かった。昼下がりというには遅過ぎる、三時半過ぎだっただろうか。がらんとした店には客の姿は無く、デコラ張りの赤いカウンターに主人らしき人物が所在なげに新聞を広げていた。ガラガラっと引き戸を開けると、「いらっしゃい」僕の姿を見ることもなく、新聞を畳んだ主人は、のっそりと厨房に入っていった。僕は戸惑いながらもカウンターに腰掛けて店内を見渡した。メニューは「中華そば」ただひとつだけなのだから、オーダーするまでもない。